自分で出来る高血圧の管理

まずは測ろう!

まずは自分の血圧を知るところから始めましょう。「血圧は病院や診療所、あるいは施設に行った時に計って貰うもの」だと思っておられませんか? 確かに昔ならそういった所に行かなければ血圧は測れませんでした。けれども今は違います。ちょっと大きな電器店や薬局に行けば数千円程度で自宅用の自動血圧計が売られています。持っておられなければ是非これをお求めになり自宅で血圧を測って下さい。
最近では診察時の血圧よりもむしろ自宅で測った血圧の方が大切だという事が分かってきました。特に身体に悪い影響を与える事で注目されている「早朝高血圧」は自宅で測定しなければ診断ができません。なお、外来で測った血圧より自宅で安静にして測った血圧はおよそ5低いのが普通です。そのため高血圧の診断や治療の目標として自宅の血圧を使う場合は外来血圧の基準より5mmHg低い値を使います。

食塩を減らそう!

「高血圧の主犯は『食塩』である」と言われるぐらい食塩と高血圧は切っても切れない関係にあります。海の中で進化を続けてきた生命にとって食塩は周りの環境に無尽蔵にあるものでした。ところが進化により陸上で生活するようになった我々の祖先は身体の中に海の環境、塩水がある環境を保つ必要に迫られたのです。その結果「食塩を身体にため込む」という基本的な仕組みをみにつけました(副腎のホルモンと腎臓の働き)。これは手軽に食塩を摂ることが出来ない動物や古い時代の人類にとってその命を育むうえでとても大切な仕組みだったのです。そして貴重な食塩を身体が欲する仕組み、塩味が美味いと感じる仕組みを身につけてしまいました。ところが現代では人間はいともたやすく「食塩」を手に入れることが出来ます。そして塩味を美味いと感じる仕組み故に非常に大量の食塩を毎日摂ってしまっているのです。ところが長い生命の進化の中で生きるために手に入れた「食塩を身体にため込む」という仕組みがあるために過剰な食塩を身体から排泄する事が上手に出来ず、結果的に身体に食塩が過剰になってしまいます。食塩の中の「ナトリウムイオン」そのものも悪いことをしますし、また身体の中の食塩を生きていくのに適切な濃度まで薄めるために身体に大量の水分も同時にため込む(体液の過剰)状態にもなります。すると血管の中の血液量も過剰になり心臓から一心拍で押し出される血液の量も増え、結果として血圧が高くなってしまいます。
塩分の過剰によって高血圧が生じ、塩分を減らせば血圧が下がることは実験でも明らかになっています。では一日に摂る塩分(食塩)はどれぐらいが適当なのでしょう?
日本の厚生省は男性成人で10g以下、女性成人で8g以下が望ましいとしていますし、W.H.O.(世界保健機構)は一日5g以下としています。一応の目安としては一日6g~7gと考えて良いでしょう。日本人の平均食塩摂取量は11gから12g、地方によっては更に多いそうですしこの塩分量に調味料として使うだけでは無く食材に含まれる食塩(ナトリウム)の量も含んでの事ですから中々大変ですが殆どすべての高血圧で減塩により血圧が下がる事が明らかになっています。過剰な食塩は胃がんなどとも関係しています。是非減塩を心がけて下さい。
なお、大量に汗をかいた時など、塩分を摂らなければならない時もありますし、全く食塩を摂らないでいると命に関わる場合もありますから注意して下さい。

そして歩こう!

適度な運動も血圧の管理には欠かせません。軽い運動、特に「歩く」だけでも血圧が下がる事が知られています。出来る範囲で出来るだけ毎日歩くことを心がけて下さい。目標は一日一万歩です。最初は大変かもしれませんが万歩計をつけて体調に合わせて歩いてみて下さい。続けることにより次第に歩ける距離と時間が長くなってくることでしょう。また心臓病などで制限が無い場合は週に2回程度軽く汗をかくぐらいの強い運動を含めることも効果的です。

やっぱり禁煙!

煙草は動脈硬化を進行させます。煙草は心筋梗塞、脳梗塞など命に関わる血管の状態の悪化、動脈硬化を引き起しますし、もちろん肺がんや胃がん、膀胱癌など各種の癌の原因にもなりますし肺気腫などの肺の病気の原因でもあります。
煙草を止めるだけでこれらの危険を減らすことができます。真剣に禁煙を考えて下さい。またご自身が禁煙されても周りの煙草の煙を吸うだけでも身体に悪い影響が出ます。 健康社会は禁煙社会、当院では保険診療による禁煙治療も行っていますのでご相談下さい。

うえひら内科・ペインクリニック © Atsushi Uehira