どうして血糖が高いとイケナイのか

極端に血糖が高くなると意識が無くなることが有りますが、少々血糖が高くても自覚的にはなんの症状も無いことが殆どです。たとえ口が渇く、おしっこの量が多いなどの症状が出ても徐々に症状が出るためなかなか気がつきません。ではなぜ血糖が高いといけないのでしょうか? それは自覚的な症状が無いうちに全身の命に関わる大切な臓器などに障害がおこり、それによる症状が出てからでは幾ら治療をしても元には戻らないからです。

少し詳しく
血糖が高いと膵臓がインスリンを分泌して血糖を下げようと懸命にに働きすぎてインスリンを作る細胞が壊れてしまい一層糖尿病が悪化します。これ以外に血糖が高いと『糖毒性』により神経や血管が傷んできます。以下にこれらによっておこる代表的な糖尿病合併症をご紹介します。
糖尿病性神経障害
糖尿病の比較的早い時期から認められます。手足の先の神経が鈍くなり感覚が障害されます。ちょうど靴下や手袋をした時のような分布で感覚が障害されるのが特徴です。また自律神経も侵されそれによって便秘、下痢、発汗障害、起立性低血圧(立ちくらみ)、インポテンツなども起きてきます。また神経障害のため糖尿病の患者さんはたとえ心筋梗塞を起しても痛みを感じないということもあります。糖尿病があると免疫が衰え傷が化膿しやすく治りも悪くなるのですが、この神経障害のために足に怪我をしても気づかず放置されてとんでもなく酷い状態になってしまうこともあります。毎日手足の状態を意識して清潔にし、観察、手当をしなければなりません。
糖尿病性網膜症
糖尿病により網膜の血管が傷害され出血や網膜剥離、血管新生により失明することもあります。その他白内障は緑内障も起します。網膜症は血糖の管理が良くなっても直ちには進行が止まらず血糖値は良くなったのに失明したという事もまま有ります。糖尿病の方は定期的に眼科を受診し眼底の状態などをきちんと診て頂く必要があります。早期に発見しレーザーなどで治療すれば失明を免れる事もできます。
糖尿病性腎症
糖尿病により腎臓の糸球体というところが障害を受けます。最初はeGFRという腎血流量の指標が低下し、微量のアルブミン(タンパク)が尿に漏れ出すようになります。また高血圧があると糖尿病性腎症はさらに悪化しやすくなります。血糖と血圧の管理を厳重にし腎保護作用のある薬を併用するなどによって治療しますが、それでも悪化すれば血液透析という腎不全の治療をしなければ命を繋ぐことができなくなります。新たに透析を始める患者さんの約40%は糖尿病が原因です。

うえひら内科・ペインクリニック © Atsushi Uehira